断熱材は熱を遮断しない?
近年の建築技術の進歩には目をみはるものがあります。
しかし断熱技術については、大変重要な技術が欠落していると言わざるを得ません。
熱の伝わり方には、「伝導」・「対流」・「放射」
の3種類があることはほとんどの人が知っていると思います。
しかしながら、驚く事に、この基本中の基本である3種類のうち、
住宅建築において実際に活用されている技術は2種類しかないのです。
つまり、「伝導」・「対流」にのみ断熱対策が集中し、「放射」という概念がそっくり抜け落ちていました。 故に決定的な省エネ住宅や建築物が構築されずに進んできているのが現状です。
例えば建築物の壁などで、その中に空間がある場合、たった5?の空間でも、
実に65%近くもの割合で放射による熱損失が起きてしまうという研究結果が、米国で示されています。
ほとんどの建築物では壁体内に通気の為の空間があるため、放射による熱損失がいかに大きいか解ります。
現在主流である高性能プラスチック系断熱材でも、その構成が樹脂と気泡から成り、
樹脂部分の伝導と気泡内の輻射により、熱を「遮断」することはできません。
それぞれ性能に差はありますが、断熱材そのものが暖まってしまうことにより、
「放射」により外へ熱を逃してしまいます。結局は熱を止める「断熱材」ではなく「熱減速材」でしかなかったのです。
熱の伝わり方…高気密高断熱住宅の矛盾!
従来の断熱、省エネ技術においては、「より熱伝導率の低い断熱材」の開発に終止しており、
つまり「伝導」にのみ多くの集中力を注いでおり、それもそろそろ限界に近づきつつあります。
一方では「対流による熱損失」を無理して減らす為に「高気密」の追求に血眼になってきました。
その結果、換気を数倍に上げなければ、室内環境の汚染の為に健康に重大な影響を及ぼすとの危惧が拡大し、
計画換気が義務付けられました。
しかしながら熱交換型の換気扇というものは、まだ熱の交換率が低く、
対流式の暖房の熱などはかなり逃がしてしまうため、経済的とは言えません。
またそれが24時間回り続ける事自体、大いに無駄でもありますし、
それでは今までの「高気密の促進による省エネとは」一体何だったのか・・・
という大きな矛盾を生み出してしまいました。